ダスカーの悲劇って結局なんだったのさ その1

 この自粛中にFE風花雪月をクリアした。

 

 とてもいいゲームだった。システムとシナリオとグラフィックのどれもが高水準でまとまっており、今までFEをまったくやったことのない自分のような人間であっても、無理なく最後まで楽しめたので、まだやっていない人はぜひやってほしい。そんな人がこんな辺境の記事がひとつしかないブログを見に来るとは正直思えないのだが、もしなんかの気まぐれで見ていると困るので言っておくと、以降全ルートのネタバレを激しく含みます。今からやるならおすすめは青→赤→黄の順で周回です。

 

 で、非常に楽しめはしたのだが、シナリオ上どうしても何か所か疑問の残るところがあった。風花雪月はおそらく意図的に、いわゆる「探偵の謎解きパート」が欠けている部分があるので、ある程度は仕方ないと思うし、だいたいは賢い先達の考察を読むことで自分なりに納得できた。

 ただ、唯一ダスカーの悲劇については、あまり情報を抜き出してまとめたり考察したりしているサイトを見つけられなかった。もしかすると見落としているだけなのかもしれないが、このたびようやく全ルートと全支援会話を一応コンプリートしたので、以下自分用の備忘録としてまとめてみた次第である。一応考察もしてみたが、筆者は初見青ルートでアランデル公が闇うごだということすらイマイチわかっていなかったポンコツなので、むしろ妄想くらいの気持ちで読んでほしい。

 万一このブログを読む奇特な人がいて、ここにも情報があるけど抜けてるとか、この考察がいいぞ!みたいなのがあったらコメント欄で教えて頂けると助かります。

 なお、確認できる限りの情報はゲームで確認したが、直近のセーブのない散策時会話等は下記サイトの台詞集で確認している。本当にありがとうございます。神。

FrontPage - ファイアーエムブレム 風花雪月 攻略Wiki - 天馬騎士団 かわき茶亭

 イベント鑑賞から確認できない差分とかあるので真剣に台本全集をだしてほしい。できれば電子で。

 

 

  

1、本編でわかる情報について

1-1、年表

 まずは本編開始時点でわかるダスカーの悲劇前後の年表(生徒名簿の所見で読めるものと、大修道院の書庫でわかるもの)をざっと抜き出してまとめてみる。なお、文章は作中そのままではない部分もあるが、取りこぼしはないはず……である。あと、ハピは直接ダスカーに絡んではいないのだが、彼女の支援会話の内容はのちのち必要なので動向を含めてみた。

1162  エーデルガルト、ディミトリ誕生

1164  妹の病死を機に、ハンネマンが帝国貴族の爵位を返上する

     リシテア誕生

1165   ハンネマンが帝国を出奔し、ガルグ=マクの士官学校の教師に。

1167  コーデリア家がフリュム家の内乱に巻き込まれ帝国の介入を受ける。

1168  ハピが隠れ里から出たところを何者かにさらわれ、魔道の実験台となる。

1171  七貴族の変。皇帝が権力を奪われ、フェルディナントの父親が権力を握る。

     エーデルガルトが伯父アランデル公に連れられ、王国へと亡命する。

1174  エーデルガルトがアランデル公と共に帝国に戻る。

1176  ダスカーの悲劇。国王ランベール、フェリクスの兄グレンほか多数死亡。

     国王一行のうち、ディミトリだけが生き残る。

     ハピが解放され、ファーガスの教会で暮らす。

     アッシュの義兄クリストフがセイロス騎士団によって処断。

     ダスカー征伐。ドゥドゥ―がディミトリの従者になる。

1180   (4月)本編開始

 

となっている。

1-2 開始後にわかる情報

 基本的にダスカーの悲劇は青ルートでしかあんまり語られないので、青ルートに沿って情報を整理してみる。

 第一部6月、カトリーヌ(ロナート卿討伐の課題出撃前会話)曰く、ダスカーの悲劇とは「ファーガス国王がダスカー人に殺された事件。殺害理由は国王が大規模な政治改革を行おうとしており、政敵が多かったため(要約)」。これがおそらく、第一部時点の作中での一般的な理解だと思われる。

 もっともこの前半部分は大嘘であり、ディミトリ曰く「父上が殺されたあの日、ダスカーで俺が見た襲撃者は、ダスカー人などではなかった」(ディミトリ・ドゥドゥー支援B)。

 

 第一部1月「討つべき敵」で、タレス(アランデル公)に対して炎帝が「ダスカーで、アンヴァルで、惨たらしい行いを繰り返してきた貴様ら……」と言う(後述するが、タレスも肯定する返事をする)ので、ここでタレスを含めた闇うごは絡んでいることが確定する。

その後しばらくディミトリが荒れクサンドルになってしまって話が進まないのだが、

 蒼月EP17、課題出撃前にロドリグ(フェリクスの親父殿)が「……パトリシア様の馬車には争ったような形跡すらなかった。(中略)瀕死の重傷で済んだ殿下を除いて、他の者は全員その場で惨殺されていたというのに、陛下の後妻であるパトリシア様のご遺体だけが、見つからなかった……」とほのめかし、

 蒼月EP18、フェルディアでコルネリアが死亡時に「……10年前(中略)パトリシア様は……すべてを犠牲にしてでも実の娘に一目会いたいと……そう、仰った。ですから……私は……王の首と引き換えに、その願いを、叶えたまで……」とさらにほのめかし、

 蒼月EP21、イベント名「死の真相」でようやく大筋が明かされる。ここはぶっちゃけ台詞と情報が多いのでエクストラからイベントを見返した方が早いくらいなのだが、ざっくり重要台詞をまとめると、

レイマン子爵麾下の捕虜「あの惨劇の渦中にあっても、パトリシア様だけはご無事だったはずです。あの方が乗られていた馬車には近づくなと、あらかじめ指示されておりましたから」

「我が主は、急進的なランベール王のやり方にかねてより危機感を抱いていました。
そんな折、何者かからダスカーの件に加担するよう持ち掛けられ……」

ギルベルト「この数節、帝国に寝返った諸侯を探り、パトリシア様について調べておりました。コルネリアの言葉は正しかった。……やはり二人は、結託していたのです。」

「無論、あの二人がすべてを仕組んだなどと申し上げるつもりはございません。
恐らく裏には、王政に反感を持つ貴族や、王国の混乱を狙う何者か……

帝国……そしてソロンやクロニエのような者たちの思惑があったのでしょう。」

というわけで、クレイマン子爵をはじめとした国内の不穏分子とか帝国とか闇うごとかとパトリシアとコルネリアが手を組んだのだな、ということはわかる。

 

2、まとめと考察

 で、結局、ダスカーの悲劇は誰が何のためにやったのか?

 絡んでいるっぽいのはクレイマン子爵、コルネリア、パトリシア、アランデル公・タレス(闇うご)あたりなので、順に見ていく。

2-1、クレイマン子爵

 こいつの関与は確定しているのだが、ギルベルトが上述のとおり「寝返った諸侯を探り」と言っているので、たぶんクレイマン以外の反王家の貴族も何人か絡んでいたと思われる。目的は急進的なやり方を推し進めるランベール王を殺すこと。そういう意味では、カトリーヌの「国王は政敵が多かったから殺された」というのはあながち間違いでもないのだろう。

 ちなみにクレイマン子爵はその後ダスカー征伐で名を上げ、ダスカーを領地としたようである。なんたるマッチポンプ。ドゥドゥ―でこいつをボコボコにする外伝があればよかったのに。

 ただ、「何者かに加担するよう持ち掛けられた」というのもおそらく真実だろうから、少なくともクレイマン子爵は犯人ではあるが首謀者とはいえない。素直に考えると、闇うごに唆され、お膳立てもしてもらったのだろう。

 

2-2、コルネリア

 まずコルネリアは闇うごだ。個人スキルが「アガルタの術」なので疑う余地がない。ただし「コルネリア」が生まれついての(?)闇うごだったわけではないと思われる。

 蒼月EP19の散策時のディミトリの台詞によると、「20年以上前、父(ランベール)に招聘されて帝国からやってきた。フェルディアを疫病から救い、聖女と讃えられていたが、ある日を境に人が変わった。それでも、父は彼女を重用し続けた。病を治した功績があり、継母も彼女を信頼していたから(要約)」。帝国で知り合いだったハンネマンも同散策時「立派な学者だった」というので、モニカよろしく闇うごに取って代わられたのだろう。

 ではいつ取って代わられたかだが、上記の会話の中で、

 ハンネマン「ちょうど我輩が貴族をやめ、帝国を去った頃……彼女もまた帝国を出て、王国へ行ったと記憶している。」

ということなので、だいたい1165年ごろに王国に渡っている。(疫病が流行ったのは1180年11月のシルヴァン曰く「20年近く前」なのでもう少し前かもしれないが、この疫病で王妃(ディミトリ母)が死んでいるので、早くても1163くらいだろう。)

 1168年にハピをさらったのは「おばさん」=コルネリアなので(ディミトリ・ハピ支援Aほか)、そのときには闇うごになっている。疫病を解決するまでに時間もかかっただろうから(コルネリアは都市の整備によって疫病を解決している。蒼月EP18モブ騎士)、だいたい1166~1167くらいに取って代わられたとみていいだろう。ディミトリが4~5歳のころということになるので、上記散策時のディミトリの「物心ついた時にはあの調子」という台詞ともつじつまがあう。

 ただし、コルネリアは闇うごなのだが、パトリシアは闇うごではないので、動機は二つ考えられる。

①親しかったパトリシアの願いを叶えるため

 長くなるので詳しくはパトリシアの項で書くが、パトリシアとコルネリアが「親しかった」ことは間違いない。パトリシアがどの程度の「お願い」をしたのか――つまり、夫と義理の息子を惨殺して帝国に帰りたいとはっきり願ったのか、ただ帰りたいと言ったら想定以上の惨劇になったのかは別として、本人の死に際の台詞を額面通り受け取れば、そういう動機も考えられなくはない。

②闇うごとしての目的のため

 闇うごとしてダスカーの悲劇を起こす必要があったため、パトリシアを利用した、もしくは利害が一致した。パトリシアのためにやったのだ、というような言い回しをしたのは、最後っ屁でディミトリにMPダメージを与えようとしたから。

 どちらなのかは作中の描写からは確定できないが、個人的には②ではないかと思っている。理由はふたつある。

 ひとつめは、闇うごの地上人に対する態度だ。

 闇うごは銀雪・翠風ルートのヒューベルトの手紙にあるように、地上の人間すべてを憎んでいる。その理由が作中だとぼんやりしか語られないのでいまいちわかりにくいのだが、作中の印象からは、単に憎んでいるというより、文字通り「獣」と称して蔑み、見下して、言い換えれば同じ人間だと思っていないように見受けられる。

 青ルート第一部1月の盗み聞きイベントなど最たるもので、敵地の道端で集まってだべっているというのは、普通すごいバカかライターが何も考えず話の都合のためにやらかした以外にはおよそ考えられないクソムーブである。それをキメたうえに、盗み聞きがバレても平然としてこっちを襲いもしないし、トマシュなんか必要もないのにソロンに目の前で変身した上にお名前まで教えて下さる。バカかクソライターでなければ理由はひとつ、闇うご側がどんなにガバっても問題ないほど、闇うごにとっての(一般の)地上の人間は技術と知性に劣った存在なのだ。いわば数だけはいっぱいいて鬱陶しい虫である。

 パトリシアがどれほど優秀だったとしても、だからといってコルネリアが虫に親愛とか友愛とか、そういう感情を抱くというのは考えづらい。いやもちろん、広い世の中には虫の方が人間より好きとかいう人もいるとは思うが……。

 ふたつめの理由はもっと単純で、パトリシアの願いは多分叶っていないからである。

 パトリシアの願いは、帝国に戻って娘に会うことだ。しかし、エーデルガルトが母の話をすることはほとんどない。唯一口にするのは黒鷲EP9の女神の塔である。

 詳しくは後述するが、エーデルガルトは両親のあいだには愛があったと思う、と述べたうえで、

 「私が生まれる前の話なのが残念。私が物心ついた頃には、母はすでに帝都を追放されていたから……。」

 という。

 もしパトリシアが帝国に戻ってエーデルガルトに会っていれば、どこかで言及するのではないか。もちろんエーデルガルトは多分パトリシアの姿を覚えてはいないと思うので、名乗らないで会ったとか遠目に見たなども一応考えられるのだが、そもそもパトリシアがコルネリア(≒闇うご)に対して影響力を持っていれば、エーデルガルトが宮城の地下で鎖につながれ、身体を刻まれるようなこと(主人公との支援C)は止めさせただろう。一目でも会えば、エーデルガルトがひどい目にあった(あっている)ことはわかるはずだからだ。そのへんを加味すると、たぶんパトリシアは闇うごに利用されたものの、本懐は遂げられなかったのだ、と考えた方が自然ではなかろうか。

 じゃあ②だとして、闇うごの目的って?……というのはちょっと後述する。

 

2-3、パトリシア

 最大の謎。彼女はいったいなにがしたくて、ダスカーの悲劇でどんな役割を果たし、どうなったのか?

 パトリシアの情報をまとめてみる。

 皇帝イオニアス9世の元妻(EP9女神の塔のエーデルガルトによれば正妃ではなく、後宮の中の一人)であり、エーデルガルトの母にしてアランデル公の妹であり、ランベールの後妻=ディミトリの継母。政争で帝都を追われ、王国に渡ってランベールと結婚した。(以上複数個所で出てくるが、まとめて聞けるのは蒼月EP19「それぞれの覚悟」ディミトリ)帝国時代の名はアンゼルマ(ディミトリ・ハピ支援B)。ぶっちゃけパトリシアについての情報はほとんどディミトリ・ハピの支援会話にしかなく、漏らさないようにすると支援会話を全部書くことになりそうなので、以下では抜粋して書いている。

 まず、エーデルガルトが女神の塔で母は「物心つくころには追放されていた」というので、物心つくころ=せいぜい5歳ごろまでとすると、パトリシアが国を追われたのは1163~1167くらいまでと考えられる。

 さらに、ハピによると、「おばさん(=コルネリア)があの人を王国に連れてきた、って言ってた」(ディミトリ支援B)ということなので、これを信じるならコルネリアが王国にわたってそれなりの地位を得たであろう1166以降ぐらいではないだろうか。というわけで、年表を見ればわかるとおり、この政争は七貴族の変ではなく、書庫の書物にも載っていない小規模なものだと思われる。彼女は後宮にいて皇帝の寵愛を賜っていたようなので、ありがちだがそのへんの争いだろうか。少なくともアランデル公はこの政変によって完全に地位を失ったりはしていないので、正妃の不興を買った妾が家を追い出された的なことだったのかもしれない。

 

 王国に渡ったパトリシアは、ランベールに見初められて再婚したが、「外部との関係を完全にと言っていいほど絶っていた。(中略)後妻として迎えたことを把握していたのも、ごく限られた者だけ」(支援B)な上に、ランベールとも「二人で会うことさえ許されていなかった」。そんな二人のあいだを常に仲介していたのはコルネリアである。(支援A)オイそんな結婚があるかよと思うが、ここを考えると長くなるので置いておく。

 その王国滞在中、パトリシアはコルネリアを信頼し、またコルネリアもパトリシアを実験施設に連れて行ってハピに会わせるなど厚遇?していたようだ。友達に自分の実験の犠牲者を見せるとか、相当にキている。パトリシアはハピの代わりにハピの境遇に怒ってくれた。また、ディミトリの面倒をよく見ていたようで、ハピによればディミトリの言動はパトリシアによく似ているらしい。ディミトリもハピの指摘を「嬉しい」と言っており、「俺を育ててくれた人」と呼ぶほど慕っている。(支援B)

 そして、コルネリアによれば、彼女が「すべてを犠牲にしてでも実の娘に一目会いたい」と願ったことが、ダスカーの悲劇の引き金となった。

 ただし、その前段階で、「エーデルガルトが帝国に亡命していたのに、王が隠していたせいで亡命中に会えなかった」とパトリシアが怒っていたことを支援Aでハピが思い出している。実際にはアランデル公は皇女を連れ出したことを伏せていたため、王もエーデルガルトが王国に滞在していたことを知らなかったので、べつに隠していたわけではなかった。ディミトリはこれについて、コルネリアがダスカーの悲劇を起こすため、パトリシアを騙して(ついでに、パトリシアの存在をアランデル公に隠し、亡命中に母娘を会わせないようにした上で)故意に行き違いを起こさせたのだろうと推測している。

 だいたい作中でわかるのはこんなところなので、以下少し考えてみる。

 まずパトリシアは闇うごではない。当たり前だが、闇うごなら行き違いを生じさせるなんていうしちめんどうくさい真似は必要ない。

 ちなみに、彼女を王国に受け入れたときのコルネリアは時期的にたぶん闇うごの可能性が高い(が確定できない)が、ハピがパトリシアとコルネリアのことを「古い友達」と聞いたと述べている(支援B)し、普通に考えて帝都を追われ、帝国時代の友人だったコルネリアを頼って王国に行ったと思われるので、友人関係になったときのコルネリアは闇うごではない。

 じゃあどんな人だったのかと言うと……これが率直に言ってわからない。

 ハピがパトリシアと面識を持ったのは、閉じ込められてコルネリアの実験台にされているとき、友達であるパトリシアをコルネリアが連れてきたからだ。そこでパトリシアは、実験台にされたハピに対して、「自分の境遇に憤ってもいいはずだ」というようなことを言ったらしい。そこだけ聞くといい人のような気もするが、年端もいかない子供を閉じ込めてそんな境遇にしているのはテメーの友達である。おぬしおぬし。まあコルネリアがどうしてそんな真似をしたのかがそもそも全然わからないのでいまいち状況も見えてこないのだが……。

 ありそうな線としては、ハピに実験を施しているのは王の命令だ、とコルネリアがパトリシアに嘘を吐いた……とかだろうか。それならば、わざわざコルネリアが実験施設にパトリシアを伴った説明もつく(パトリシア→ランベールの心情を悪化させるため)し、ハピを見てなお、パトリシアがコルネリアに信頼を置いていた理由もいちおう理解できる。

 一方ギルベルトは最初、客観的に考えれば元敵国人の上死体もねえとドチャクソ怪しいパトリシアを疑ったロドリグに対して「あのお方への侮辱は、いくらあなたとて、許されることではない」と言うので(蒼月EP17、着陣)、パトリシアのことはかなり好意的に見ていたはず。ディミトリも、メルセデスとの支援B+で継母の思い出を語るのをはじめ、似ていて嬉しいというほど慕っている。おそらくディミトリの面倒は本当によく見ていたし、ハピに同情し、義憤を覚えるようなひとがらであったのは事実なのだろう(ディミトリはともかく、ハピに対して慈悲深い人物の演技をする必然性がない)。

 その一方で、コルネリアがわざとランベールとパトリシアをすれ違わせ、ランベールを憎むよう仕向けていたところを見ると、最終的に王への憎しみを募らせ、「すべてを犠牲にしてでも実の娘に一目会いたい」と告げたこともまた事実なのではないだろうか。

 とにもかくにも、ついにパトリシアは決断を下し、ダスカーの悲劇は起こった。

 犠牲にする「すべて」に、どの程度までが含まれることを彼女が見込んでいたのかは定かでないが、ハピへの態度を見ていると、王家の人間はともかく、年若いグレンのような騎士たちがひとり残らず惨殺されることまでを良しとしたとは考えにくい…というのは、パトリシアに夢を見すぎだろうか。

 まあこのへん、全然情報がないので完全に憶測というかもはや妄想なのだが、一応このあとの考察をするうえでは、パトリシアは引き金を引いたが、あそこまでの惨劇になったのは想定外だった……ということにしておく。

 

 しかしながら、それでもまだ謎が残る。これほどの手間暇をかけ、闇うごはなぜそこまでしてパトリシアの協力を得たかったのか?そもそも、闇うごはどうしてダスカーの悲劇を起こしたかったのか?

 

 ……というのをアランデル公にからめて書こうと思ったが記事がどう考えても長すぎなので分けます。やる気があれば次回、アランデル公とタレスと闇うごの目的から。