ダスカーの悲劇って結局なんだったのさ その2

というわけで、前回の続きである。

2ー4、アランデル公とタレスと闇に蠢く者たち

 

 ダスカーの悲劇において、闇に蠢く者たち、ひいてはその首魁と思しきタレスが関わっていることは間違いない。そしてタレスが本編時にアランデル公であったことも間違いない。このタレスがらみの謎と、前回の積み残しを順に処理したいと思う。

 

 

 

2ー4ー1  アランデル公はいつからタレスになったのか+当時の帝国の状況

 これはディミトリのファインプレーによりほぼ確定できる。

 ディミトリはもともと、アランデル公をダスカーの悲劇の首謀者と睨んでいた。「王国を発った時期、不自然に途絶えた寄進。……何かと不審な点が多すぎた」のが理由である(蒼月EP19、同盟の危機)。

    この寄進というのは、かつて熱心なセイロス教徒だったアランデル公……もうややこしいので、闇うごに取って代わられる前のアランデル公を生前公と呼ぶことにする。この生前公がしていたセイロス教会への寄進のことで、EP6の挙動不審・青獅子の学級でディミトリが調べていた寄進帳から、1174年、つまりアランデル公がエガちゃんを連れて王国を発った年に途絶えていると確認できる。

 逆に言えば1173年までは寄進をしていたということであり、当然闇うごが教会に金を払う必要性は皆無なので、アランデル公は1173年までは人間だったということになる。つまり、エーデルガルトを王国に連れ去った時点のアランデル公は、少なくとも普通の人間ではあったのだ。

 一方、ダスカーの悲劇当時のアランデル公は1176年なのでもうタレスになっている。

 

 ここで少し、当時の帝国の状況と、アランデル公の立場を整理してみる。

 アランデル家は、帝国貴族名鑑によれば、「元は帝国の小貴族だったが、現当主であるフォルクハルトの妹が皇帝イオニアス9世の室となってから急伸し、アランデル大公の位を贈られる。エーギル家に協力し、七貴族の変を起こした主犯格の一人」である。

 いつごろ妹(=パトリシア)が嫁いだのかとか全然資料がないのだが、とりあえずエーデルガルトが生まれた1162年ごろは、まさにその妹を足掛かりに勢力を拡大していた時期と考えていいだろう。

 その後、政争により、たぶん1166年ごろ、パトリシアは帝都を追われる。ほぼ同時期の1167年、フリュム家の内乱が起きる。

 このフリュム家の内乱は、「中央集権化を打ち出した皇帝イオニアス9世に対し、同盟領に近いフリュム家が、帝国からの独立と、同盟への参加を画策。同盟のコーデリア家の協力を得て叛旗を翻したものの、帝国によって討伐された。」(外伝因果応報・クリア後会話)

というものである。つまり皇帝>貴族という結果に終わったわけで、このへんまでは皇帝の方が強かったのだ。

 そして、フリュム領の統治は実質的に隣人であるエーギル公が行うようになり、コーデリア領も帝国の介入を受けた。リシテアの支援会話でわかるが、ざっくりまとめると、このときコーデリア家に闇うごがやってきて、好き放題実験を始めたらしい。のちの七貴族の変のあと、エーデルガルトに血の実験を行ったのも「宰相(=エーギル公)一派の貴族たち」(エーデルガルト支援C+)であることを考えると、「帝国の介入」とは実質的にはエーギル公(もしくはその一派)の介入であり、彼らはその時点から闇うごとつながっていたのだろう。

 一方で、貴族たちはこの件を機に権力が皇帝に一極化することを恐れ、最終的に七貴族の変につながっていく。七貴族の変を起こしたのは六大貴族なのだが、きっかけとなったフリュム家をくわえて七貴族と呼んでいるらしい(外伝因果応報・クリア後会話)。

 ちなみに六大貴族はエーギル、ベルグリーズ、ヘヴリング、ヴァーリ、ベストラ、ゲルズである(第一部EP2散策時フェルディナント)。

 まあ、それはともかく、帝国貴族名鑑でアランデル公は七貴族の変の首謀者とされている。七貴族の変は1171年に起きたので、当時のアランデル公は生前公である。たぶん、政争で妹を追放された恨みなんかもあって、自らの意思で七貴族の変を起こしたのだろう。そしてたぶんその直後に、王国に亡命している。

 ……それって変じゃないだろうか?

 

2ー4ー2  なぜエガちゃんを連れて帝国に亡命したのか

 

 年表を信じるなら、1171年にはエーギル公が帝国の実権を握っているので、七貴族の変は71年中には終わったと考えられる。つまり、エーギル公とアランデル公は政争に勝ったのだ。にもかかわらず、アランデル公は王国に亡命している。おまけにエーデルガルトまで連れて行った。少なくとも、翌年には自らが煽動した政変が成功を見たのに。それはなぜか?

 エーデルガルトの戴冠式イベントで、イオニアス9世はアランデル公の連れ去りを止められなかったことを謝罪している。エーデルガルトひとすじのヒューベルトも、父と三日三晩の追撃戦を繰り広げてまでエーデルガルトをお助けしようとしている(エーデルガルトとの支援B)。なのでてっきり、最初にこの話を聞いたとき、闇うごのアランデル公がなにかに利用するためにエガちゃんを連れ去ったのだと思っていたが、それだと辻褄が合わない。

 皇帝に言うことを聞かせるための人質として?とも思ったが、皇帝にはほかに10人の子供がおり、彼らに対しては闇うごプレゼンツのとんでもねえ実験がすでに始められている可能性が高い。もはや人質もクソもないのである。

    一応、紋章持ちで次期皇帝の可能性が高いエガちゃんを懐柔するためとは考えられるが、亡命まで企てる理由にはいささか弱い。

 そうすると、生前公がエーデルガルトを連れ出したのは、政治的利用のためではない可能性が高い。

 ではなにかといえば、「おぞましい実験からエーデルガルトを救うため」……だったのではないだろうか。

     ほかの貴族にとってはただの道具でも、生前公にとって彼女は血のつながった姪であり、帝都を追われた妹の一粒種だ。それが地下に繋がれて体を切り刻まれることを、たとえ貴族だろうと、普通の人間は良しとしないだろう。

 王国にいたころのエーデルガルトは、ディミトリ曰く、不自由な生活を強いられて退屈しているように見えたらしい。彼女の存在は周囲に伏せられていたというので、外部との接触がほとんどできなかったのだろう。しかしそれは逆に言えば、退屈できるほど平和だったとも言える。アランデル公は七貴族の変の首謀者の立場を利用して、自分の肉親ひとりだけは助け出したのだ。

 ……まあ状況証拠だけで考察と言うのもはずかしいような感じなのだが、実はこれ、似たようなことをした人がもう一人いるのではないかと思うのだ。実の子に粛清されたベストラ候である。

 こっちはほぼほぼ勘なのだが、ヒューベルトとハンネマンの支援Bで、ハンネマンはベストラ候について、無欲で、反乱に加担するような人間には思えなかったと告げる。その上で、エーギル家についた理由をこう述べる。

「ただ……彼にも守りたいものがあったと我輩は思うのだ。逆臣の汚名をかぶろうとも、我が子に粛清されようとも、守りたいものが。」

 この「守りたいもの」、プレイ中にはぜんぜんほかの材料が出てこない(と思う)。しかし想像させる気がないのならこんなセリフは吐かせない……と思いたいので、乏しい材料からベストラ候が大事にしそうなものを想像すると、もうひとつしかないわけである。

 実の家族、わが子しか。

 七貴族の変に闇うごが関わっていることは確実だ。闇うごに対する知識がないただの人間が、闇うごの技術に対抗するのは大変困難なのは想像に難くない。ベストラ候はフレスベルグ家の敗北を悟り、その上で何を守るべきかを選択したのではないだろうか。

 

 ……話がそれたが、アランデル公の亡命理由を姪を守るためだと考えると、帝国に戻った理由は単純明快だ。生前公がタレスに取って代わられ、タレスにとってエーデルガルトは新しい実験材料に過ぎないので、さっさと帝国に戻って実験したいなーという次第である。

 このとき、帝国はエーギル公と結んだ闇うごが牛耳っている。

 

2ー4ー3   タレス≒闇に蠢く者たちは、なぜダスカーの悲劇を起こしたのか

 

    長くなったが、上記の条件を踏まえて、闇うごの目的を考えてみたい。闇うごがダスカーの悲劇に関わっているとわかるのは、前回も引用した第一部1月の盗み聞き会話だ。

 

炎帝「ダスカーで、アンヴァルで、惨たらしい行いを繰り返してきた貴様らに……果たして救いなど来るかな。」
タレス「すべてはおぬしが力を得るためにやったことではないか。」

 

 ディミトリは上記の会話を聞いて、炎帝がダスカーの悲劇の首謀者だと確信する。普通に聞けばそりゃそうなるわな。

 しかし、ダスカー当時エーデルガルトは13歳。しかも帝国に戻った二年前から血の実験をされている最中のはずなので、彼女にこの件を主導する力がないことは明らかと言っていいだろう。そうすると、ダスカーは闇うごが神をも燃やし尽くす最高傑作エーデルガルトを作り、セイロス教会をバチボコにする計画の一環として行ったのであり、そのことを指して「おぬしが力を得るために」と言ったのは間違いがない。

 では具体的に、ダスカーの悲劇の目的はなんだったのか?そしてパトリシアはどういう役割を果たしたのか?

 これは二つ考えられる。

①セイロス正教会に近しい王国の力を削ぐため

 これはまず間違いなくあるだろう。ダスカーの悲劇時点で闇うごは宰相一派と結んで帝国を掌握しており、戦争になれば帝国&闇うごVS王国&教会という構図は避けられない。将来エガちゃんが戦うときのために王国の戦力を削いであげたんじゃーん、逆に言えばおぬしが力を得たってことよ?というわけだ。

 この場合、パトリシアの協力をとりつけたのは、ダスカー随伴時のルートを漏らさせるとか、襲撃しやすくなるようになにか(火をつける、隊列を乱すなど)させるため……ということになる。

 しかしこれだけが目的だとすると、微妙な点がふたつある。

 ひとつは、パトリシアの役割はコルネリアでもできるんじゃないのか?ということ。確かにダスカーに同行することはできないだろうが、王国で重用されていたコルネリアなら旅程くらいは教えてもらえるだろう。むしろ王と二人きりで会うことさえ禁じられていたパトリシアの方が、手持ちの情報については少ない可能性すらある。というか、ぶっちゃけてしまえばこの程度の役割、なくてもないなりにどうにかなりそうである。前回書いたが、パトリシアに王国を捨てる決心をさせるために、コルネリアはけっこうな手間暇をかけている。そのコストにリターンが見合ってなくない?と思うのだ。

 もうひとつは、エーデルガルトの言いまわしだ。

 彼女は「ダスカーで、アンヴァルで」と口にする。この言い回しには変な点が二つある。

 ひとつはそもそも、ダスカーが出てくること。

 闇うごが惨たらしい真似をした例は枚挙に暇がないはずだが、なぜわざわざダスカーをチョイスしたのか?このダスカーが悲劇を指すのかそのあとの征伐を指すのかは謎だが、エーデルガルトが直接体験したアンヴァルと並べて出てくるのには突然感がある。直近にはやはり自分が(炎帝あるいはエーデルガルトとして)直接目にしたルミール村の件があるので、そっちを出すのが自然ではないだろうか。あるいは、帝国領であるフリュム領での惨状でもいい。……まあここでダスカーの関与を匂わせないとディミトリが敵をロックオンしてくれないので、その都合かなという気もするんだけども。

 もう一つは順序である。年表と照らし合わせるとわかるが、エーデルガルトが帝国に戻ったのが1174年、ダスカーは1176年。どうしてダスカーが先に出てくるのか?

 まあ脚本がそこまで考えてなかったから、とか別に必ずしも時系列順に喋らなくてもいいし、とかあるのだが、せっかくなのでこの言い回しに理由があるとしたら……と二つほど理由を考えてみた。

 

・エーデルガルトもダスカーの悲劇に立ち会っていた

 1176当時のエーデルガルトはおそらく闇うご実験中である。ある程度の成功を得て、そのパワーの試し撃ちのためにダスカーが使われた、という線。これならば、エーデルガルトが直接体験した出来事だし、インパクトはアンヴァル以上だろうから、アンヴァルよりも先に出てくるのも頷ける。

 ……が、さすがに無理があると思う。まず王国領までエーデルガルトを持っていくのが大変だろうよとかもろもろの問題を置いても、第一部2月課題出撃後(決別の刻・青獅子の学級)で、ディミトリがダスカーの惨劇を起こした理由を尋ねると、エーデルガルトは「知ったことではない」と答え、紅花EP17「いざ王都へ」でも「彼が復讐に囚われたのは、伯父たちの策謀の結果……。すべてを私のせいだと考え、彼は王としての道を見失ってしまった。」という。さすがに直接関与していてこの返答は畜生すぎるので、本当に知らないのではなかろうか。

 

・直接関与はしていないが、エーデルガルトを炎帝にするために必要だった/行われた

 単純に帝国以外の戦力を削ぐ目的だけでなく、ダスカーによって何かを得て、それが炎帝の作製に使われた、というのはどうだろう。エーデルガルトはなんらかの時点で闇うごからダスカーが彼らの仕業によることを知らされたはずだが、「ダスカーの件のおかげでお前の実験が進展したよ~」みたいなことを言われれば、印象に残っていてもおかしくない。        おまけにその場合、ダスカーの犠牲によってアンヴァルの実験が完成を見たので、エーデルガルトの時系列の認識としてはダスカー→アンヴァルでも間違っていない。

 じゃあ何を得たのか?

 というわけで、話がとてもとても長くなったが、闇うごの目的として考えられるもの、その2。

②エーデルガルトの実験のためにパトリシアが必要だったため

 パトリシアはエーデルガルトの実母、近い血を持った人間である。エーデルガルトの血の実験が成功したのは、パトリシアでも実験を行ったから。実験を行うためには、生身の元気なパトリシアが必要だった。だから、パトリシアの協力を求めた。タレスの言葉は、文字通り、エーデルガルトが二つの紋章の「力」を得るために、ダスカーでもアンヴァルでも惨劇を起こしてやったのだ、という意味だと考えれば、こちらも筋が通る。

 ……まあ、これだとパトリシアは実験の犠牲になっているので、それにエガちゃんが言及しないという不自然さが残るのだが……。闇うごはダスカーの惨劇が実験の進展に必要だったことは伝えたものの、パトリシアを材料にしたことは言わなかった、ということでなんとかダメだろうか。ダメか。

 

 というわけでまとめると、「ダスカーの悲劇は闇うごが実験材料としてパトリシアを手に入れつつ王国の勢力を削ぐため、コルネリアを使ってパトリシアの協力を取り付け、王国内の不満分子をそそのかして協力させて行った」……んじゃないのかなーと思うのだが、これ以上の確証はない。

 特にこの考察はパトリシア善説に基づいて書いたので、パトリシア悪説だと全然違う見方になる(例えばパトリシアからダスカーに王のみならず王子も連れて行ってくれるように頼んでもらって一網打尽を狙ったとかなら、コルネリアだけでは足りずパトリシアの協力をとりつける意味もあるだろうし……でもディミトリ不憫すぎんか??)のだが、とにかく材料がない。早く設定資料集か台詞集か続編を出してほしい。ひたすらハンネマン先生がシャンバラを発掘するだけの続編でもいいので……。

 

おまけ1:エーデルガルトとディミトリの認識について

 エーデルガルトはダスカーの悲劇について、「闇に蠢くものたちの策謀によって起こされ、自分は無関係だが、ディミトリは全部エガちゃんのせいだと思っている」……と認識している(上記紅花EP17)。これは紅花での認識だが、全ルート全段階を通じてこうだろう。ただ、闇うごの犠牲者として母を挙げることも、他に母の思い出を語る部分もまったくないので、パトリシアについてはあまり知らないか思い入れが薄いようだ。決別の刻・青獅子の学級でディミトリに「(ダスカーで)実母まで手にかけたのか」と聞かれて動揺したようにはあまり見えないので、実母がダスカーで死んだことは知っていそう。パトリシアが王国に嫁ぎ、ダスカーで巻き込まれて死んだ……くらいの認識ではないかと思われる。物心つく前に姿を消した母であれば、わりと自然な反応なのかもしれない。

 

 じゃあ一方ディミトリはというと、蒼月ルートでは割と核心に近づいている。

 アランデル公のところで引用したように、ディミトリは当初アランデル公を首謀者として疑っていた。現在のアランデル公はタレスであり、闇うごの首魁なので、これはある意味一発で正解を引いている。

 次に「すべてはお主が力を得るために~」を聞いて炎帝がすべての首謀者だと思い込む。まあ実は全部炎帝が糸を引いていた、とまで思っていたかは定かでないのだが……。たぶん闇ゴリラ期間くらいまでの(あるいは青以外の)ディミトリにとって、エーデルガルトが直接ダスカーに手を下したかどうかはもはやどうでもよかっただろう。帝国と闇うごは手を組んでおり、帝国のトップはエガちゃんなので、彼からすれば倒すべき敵の親玉はどのみちエーデルガルトである。

 そしてEP19「同盟の危機」で「アランデル公がコルネリアと結託して……なら5年前の、クロニエたちの言葉は……?」と考え込んでいるので、たぶんここで炎帝が首謀者ではないことに気付き始めている(盗み聞きイベントのメンバーはタレス炎帝クロニエなので、ここでいう「クロニエたちの言葉」はタレスのお前のためやぞ発言でいいだろう。)。その後クレイマン子爵の部下の懺悔を聞いたので、おおよその全貌は把握できたのではないか。ディミトリが最後にちゃんと整理して自分の推理を語ってくれればもうちょっと把握しやすかったと思うのはプレイヤーがぽんこつだからだろうか。

 シルヴァンあたりはノーヒントでダスカー人の仕業じゃないと見抜いていた(ドゥドゥー支援C)ので、誰かとの支援でそのへんを探ってほしかった気もする。ディミトリかドゥドゥーと支援A+くらいまであればもうちょっと情報が集まりそうだったのだが、まあ同学級女子のアネットとすら支援Aがない男にそれを期待するのは酷というものか。

 

おまけ2:なぜヒューベルトは蒼月ルートでは手紙を書いてくれないのか

    蒼月はレア様救出のあたりですでに時をよすがしてしまうので実は手紙があったケースも考えられなくはないが、とにかく、おそらく、蒼月ルートのヒューベルトはシャンバラの場所を把握していない。そしてたぶん紅花ルートでもクリア時点では把握していない。

 

    ヒューベルトがシャンバラの場所を突き止めて手紙をくれるのは銀雪と翠風なのだが、ここでヒューベルトは「メリセウス要塞を落とした際、彼らが発する魔道を感知し、本拠を割り出した」と書いている。この魔道とは光の杭のことだ。        銀雪と翠風ではメリセウス要塞に光の杭が落ち、それを知っていた死神騎士が逃げたことで主人公らはからくも全滅を免れる。

    ところが蒼月ではそもそも光の杭が落ちていない※ので、ヒューベルトも突き止めようがない。ついでに帝国側が把握しているネームド闇うごはクロニエ・ソロン・タレス・コルネリア・ミュソンあたりだと思うのだが、全部死んでいる。

    そうすると手紙があったとして、「闇うごっていうのがいて地上めっちゃ恨んでるんでいつか災いもたらすから気を付けてね。知ってるのはだいたい死んじゃったしあとどのくらい残ってるのかわかんねーし本拠地わかんねーけど」くらいしか書くことが……ないので……やっぱりないんじゃないですかね手紙。まあディミトリとハピをペアエンドにしてあげると結構闇うごを深堀りできたっぽいので、なにがしか手掛かりは残っていたのかもしれない。

    ただヒューベルトがいないことに加え、たぶん闇うごは光の杭を少なくともしばらくは撃てないので、被害は少ないだろうがシャンバラを突き止めるのはだいぶ難しそうである。

 

    一方紅花は、アリアンロッドに光の杭が落ちるのだが、シャンバラには行けない。納期とか話の都合というのもあるとは思うが、紅花の光の杭には他2ルートと大きく違う点がある。エーデルガルト陣営が事前に光の杭が落ちることを察知していないのだ。

    翠風と銀雪で逃げ出す死神騎士は炎帝の部下なので、ヒューベルトも当然光の杭について(なんらかの兵器を用いる、レベルではあろうが)聞かされていた可能性が高い。

    一方紅花EP16「アガルタの術」でヒューベルトはアリアンロッドに落ちた杭について「おそらくは何かの魔法」と言っているので、知らされていなかったのはもちろん、魔道だということも詰め切れていない。つまり、他2ルートと紅花では光の杭に対するヒューベルトの知識量にだいぶ差がありそうなのだ。逆探知はとてもできなかったのではないだろうか。将来的に探知できる可能性はあるが、それは光の杭を落とされるということで……タレスもミュソンも健在だし、けっこう茨の道である。がんばれエガちゃん。

 

※蒼月ルートでの光の杭は、撃たなかったのではなく撃てなかったと思われる。

 タレスはシャンバラという本拠地に光の杭を落とし、もろとも自爆特攻を試みる権限がある以上、少なくともシャンバラを拠点とする闇うごの最高権力者か、それに近い存在だ。しかし蒼月ルートでは、クロードの策略でディミトリがフェルディア高速占領からのデアドラ大返しをキメたため、タレスはコルネリアが撃破されたことを知るよりも前にデアドラでディミトリと鉢合わせ、街角で手槍ワンパンされてしまう。闇うごからすれば相当にやばい事態で、メリセウスには本来ならなんとしてでも杭を落としたかったはずだ。それなのに落とせなかったのは、タレスがいないと発射命令が出せないからではないだろうか。体制を立て直し、次の指導者を立てればあるいは撃てるようになるのかもしれないが、宮城での様子からするとだいぶ追い詰められていそうなので、復旧には時間がかかるだろう。いや、復旧しないのが一番いいんだけどね。