黄燎の章の謎(FE無双風花雪月)

FE無双風花雪月を全ルート全支援会話クリアした。

青燐は知りたかったのは微妙にそこじゃないんだけどなとかもっと正面から帝国と殴り合いたいんだけどなと思いつつ受け入れられるレベルだったが、黄燎の章は後から後からツッコミ所が湧いてきてどうしてくれようかと思った。

一言で言うと変。面白いとかつまらないとかにたどり着けない……あまりにも変で。

普通に感想を書くのが難しいので気になったところを全部ぶちまける記事です。黄燎について基本スタンスがネガティブであること、原作(FE風花雪月)を含む全ルート全支援会話のネタバレを含むことをご了解の上、読みたいという酔狂な方だけ続きをお読み下さい。
あと、取りこぼしたイベントや会話はほぼないはずですが、普通に忘れていたり勘違いしていたりするところもあると思います。もしご指摘いただけたら幸い。

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ダスカー関係まとめ年表+おまけ

 この記事は以下の二つの記事の補足とおまけである。

 

kowa-moz.hatenablog.com

 

 

kowa-moz.hatenablog.com

 

 今になって見返してみたら誤字脱字勘違いなどが多発していたので訂正した。読んだ方すいませんでした。ついでに、記事内の考察を踏まえたダスカー関係の年表を作ってみた。さらにちょっとおまけとして気になった点を書いたが、ほんとーにただの思考整理で考察にはなっていないので気を付けてほしい。

 

 

年表

年度が特定できない(前後2~3年)ものは※をつけている。

 

1162  エーデルガルト、ディミトリ誕生

1164  妹の病死を機に、ハンネマンが帝国貴族の爵位を返上する。

     リシテア誕生

     王国内で疫病が流行し、ディミトリの生母(王妃)が死亡※

1165  ハンネマンが帝国を出奔し、ガルグ=マクの士官学校の教師に。

     コルネリアが帝国から王国へ渡り、都市の整備を進言して疫病問題を解決、宮廷魔導士として重用される※

1166  パトリシアが王国に渡り、ランベール王に見初められて結婚する※

     (同時期?)コルネリアが闇うごに乗っ取られる※

1167  コーデリア家がフリュム家の内乱に巻き込まれ帝国の介入を受ける。

1168  ハピが隠れ里から出たところをコルネリアにさらわれ、魔道の実験台となる。

1171  七貴族の変。皇帝が権力を奪われ、フェルディナントの父親が権力を握る。

    エーデルガルトが伯父アランデル公に連れられ、王国へと亡命する。

1174  アランデル公がタレスに乗っ取られる。

    エーデルガルトがアランデル公と共に帝国に戻る。

1176  ダスカーの悲劇。国王ランベール、フェリクスの兄グレンほか多数死亡。

    国王一行のうち、ディミトリが生き残り、パトリシアは失踪。

    ハピが解放され、ファーガスの教会で暮らす。

    アッシュの義兄クリストフがセイロス騎士団によって処断。

    ダスカー征伐。ドゥドゥ―がディミトリの従者になる。

1180  (4月)本編開始

 

 

おまけ:クリストフについて

 アッシュの義兄クリストフは、ダスカーの悲劇への関与を理由にセイロス騎士団に処断され、これが第一部6月のロナート卿の挙兵の原因になった(「五里霧中・青獅子の学級」)。

 アッシュとカトリーヌの外伝「ともに天を戴かず」では西方教会の残党狩りが行われ、西方教会の本部から見つかったロナート卿がらみの資料をアッシュが受け取る。この中身については、外伝クリアを条件に鑑賞可能になるアッシュ・カトリーヌ支援Cで語られる。

 そこには「クリストフ=アルド=ガスパール」の署名のある手紙が含まれていたが、内容はダスカーの悲劇についてではなく、レアの暗殺計画についてだった。同支援会話時のカトリーヌによると、クリストフはダスカーの悲劇には関与しておらず、あくまで「西方教会の口車に乗せられ」て、レアの暗殺計画を企てたがために処刑されたのだが、フォドラの混乱を防ぐため、表向きにはダスカーに関与したと発表された、ということらしい。

(あんまり関係ないのだが、EP3散策時のジェラルトが数年前にクリストフの依頼でガスパール城に行ったというのは、このごたごたに関わったということなのだろうか?記憶がうっすそうなところを見ると関係なさそうな気もするが……)

 

 一方、ロナート卿はアッシュの言動のもろもろからわかるように人格者であり、さらにディミトリとの戦闘会話を見る限り、王家との仲は悪くなかったようだ。ロナートは刃を交えることを詫び、ディミトリは「貴公の悲憤、察するに余りある。貴公を討つのは本意ではない」と言う(でも討つ)。

 

 このロナート卿の挙兵の動機、実はそう単純ではなく、いくつかの内容が絡み合っているように見える。

 挙兵の目的自体は、翌節の西方教会の窃盗(強盗)?を成功させるための陽動で間違いないだろう。戦力差はひっどく、誰がどこからどうみても無謀な挙兵だったようなので、そのまま真っ向から戦争して教会に勝とうとしていたとは考えにくい。翻っていえば、反乱は失敗し、一旦は自軍が敗北することを織り込み済みなわけで、そこには相当数の自軍の死が当然含まれることになる。つまり、民思いのよき領主だったロナート卿が、大事な領民を犠牲にしてもよいと思うだけの理由か、あるいは領民の方に、犠牲になってもよいと思えるだけの理由があったわけだ。

 

 作中、青以外のルートやアッシュの支援会話なしでわかる内容からすると、ロナート卿の挙兵の理由はざっくり言うと宗教絡みである。現在の中央教会は女神の意に反しているから、世のため民のため、どのような犠牲を払っても、女神の名を騙る背信者であるレアを討つべきだ、というもの。ロナート卿の戦闘会話(VSアッシュ、VSディミトリ)はそのものずばり、この動機を述べている。民兵の方はどちらかと言うと、敬愛する殿様があいつは悪だ討たねばならんとおっしゃるので、領主様を守るために突撃している、という風情で、どこまで理解しているんだか定かでないが。

 そして、中央教会が背信者だという考えを吹き込んだのは西方教会で間違いない。ではロナート卿はなぜ、その考えを確信に変えたのだろうか。

 確かにロナート卿は実の息子を教会に処刑されている。まあ殺されたんだから憎くて当然だよね……とおも……思えるだろうか?

 クリストフはレア様の暗殺計画を企てていた。それを理由に処刑された。これだけ見ると、クリストフが処刑されるのは当然だ。だってレア様は中央教会のトップなのだ。トップを暗殺しようとするやつを生かしておけるわけがない。もはや今生に救いはありませんするほかないのである。話し合いで解決すべき?相手がまず話し合いを放棄して暗殺とかいうクリティカルな暴力に頼っているのに話し合いとかむりむりかたつむりに決まっていることは小学生でもわかる。右の頬をぶたれたくらいなら左の頬を差し出してもなんとかなるかもしれないが、左胸を刺し貫きに来られたら右胸を差し出す余裕はないのだ。貴様はすでに死んでいる。

 つまり、クリストフを殺したからレア様は背信者だ!という論理は、「背信者でないなら黙って殺されるべきor殺されそうになっても絶対に相手を殺さないべき」というなかなか共感しにくい論理に裏打ちされているのである。困難すぎんか?ましてや、仏教のように聖職者の殺生厳禁ならともかく、セイロス教は剣を振り回し戦の陣頭指揮をして戦い抜いたセイロス様に端を発する宗教なのである。ロナート卿がそれでもとにかく殺すなんて許せない!と思うような人だった、という可能性はあるのだが、ここではその可能性は無視する。

 もっとも、中央教会がレア様個人への敵対者に厳しいのは事実だろうし、レア様が教会運営についてはほぼ独裁なのは間違いない。善し悪しはおいておいて、それはレア様=セイロスであることを考えると(レア様の心情としては)当然なのだが、そのことを知らない人々にとっては「女神の名を騙って独裁を敷いている」と見ることも可能だろう。しかしそれだけで絶対レア様暗殺しないと、とまで思い詰めるだろうか?

 まあ、西方教会としては、そうやって思い詰めたのだと思う。たぶんそこまでには、レア様に楯突いて処刑された同胞や、宗教としてのセイロス教の思想の違い(例えばアビスの書庫に見られる技術発展の制限など)や、そういうのがおそらく絡んでいて、作中の描写からではいまいちわかりにくい(というかレア様が、首謀者でなくても関わったら皆殺しとか疑わしきは皆殺しとかそういうことをやったという描写があればわかりやすいのだが、作中ではこっちを殺す気で襲い掛かってくる連中をまとめて捕まえて処刑しているだけなのでどの程度独裁だったかが正直あんまりぴんとこない)。

 ロナート卿はそういう、今までの教会の暗部を西方教会から聞いて、レア様死すべしと考えた、というのはありそうな線だ。実際クリストフはそうだったのだろうし。

 しかしそうするとちょっと個人的にしっくりこないのが、ディミトリとロナート卿の戦闘会話だ。以下全文抜粋する。


ロナート「申し訳ありません、殿下……。あなたと刃を交えることになろうとは……」
ディミトリ「……ロナート卿。貴公の悲憤、察するに余りある。貴公を討つのは本意ではない、が…………すまない。」
ロナート「殿下……我が子のため、民のため、私は、ここで止まるわけにはいかぬのです。道を開けられぬと仰せならば、押し通るしか……!」

 これ。

 ディミトリは西方教会とつながりなんか当然ないので、教会の暗部的な情報は(察している部分はあるにしても)知らないはずだ。そうするとロナート卿が教会の暗部を知って挙兵した場合、自然な心情としては、「教会にはあなたの知らない暗部がいっぱいあるんですよー教会の味方なんかやめてー!」みたいなことを言いたくならないだろうか?ていうかディミトリ側だって、アッシュみたいに「どうしてこんなことを」と聞くのが自然である。実際、アッシュは義兄の件を知っているが、それでも「どうして」と聞いている。しかしディミトリは何も聞かない。教会を許せないロナート卿の心情を1から10まで理解している感じなのだ。

 

 そもそもロナート卿は高潔なひとがらっぽく、王家と仲も悪くなかったっぽい。そうすると、カトリーヌ曰く「ひとがよすぎた」クリストフが、国王を惨殺したダスカーの悲劇に関与したというのは、当時でもかなり不自然だったのではないだろうか。その上、今のダスカー人の処遇からすると、関与したと名指しされた人間が周囲からどんな扱いを受けたかは想像に難くない。ロナート卿が領主の地位を追われなかったので連座制にはされなかったのだろうが、卿自身への余波もずいぶんあっただろうし、卿が王家と親しければ親しいほど、よけいに息子が殺人者だと言われたのは堪えただろう。

 しかしそれは教会の、この場合はとくにレア様の支配基盤を揺らがせないための嘘だった。フォドラの混乱を招くと言えば聞こえはいいが、「今の」「中央教会の」支配に疑問を抱くものがいるという事実を隠ぺいするために、クリストフは国王一家殺害の犯人という濡れ衣を着せられたのだ。

 もちろんレア様の暗殺を企てたのだってとんでもない行いで不名誉には違いないし、それはそれで王国と教会の関係だとかいろいろなところに問題が生じただろうが、それでも事実であり、クリストフが責任を負うべきクリストフの行動の結果だ。だが、ダスカーの関与者という不名誉はちがう、その点でクリストフは、まさに「レアによる教会支配」の犠牲になったのだ……と、ロナート卿は考えたのではないだろうか。

 実はクリストフの手紙が見つかったのは西方教会の本部なので、ロナート卿がどの時点で、どこまでを知っていたのかは定かでない。ただ少なくとも、本編中の挙兵時には、クリストフがダスカーに関わっていないことは知っていたか、もともと確信していただろう(でないとディミトリの前でカトリーヌに向かって裏切り者の狂信者とは言えまい)。

 要するにロナート卿は、息子を処刑されたことではなく、死後息子が濡れ衣を着せられたことから、教会を憎むようになり、同時にクリストフのような「犠牲」を産む教会は倒さなければならない、という「正義」をもつに至ったのではなかろうか。民兵たちも、当然クリストフのひとがらは知っているだろうから、そりゃ教会は間違っていると思っても不思議はない。

 そしてディミトリも、クリストフの本当の罪状はともかく、彼が本当はダスカーの悲劇に関わっておらず、教会によって都合よく犯人に仕立て上げられたことについては、知っていたか確信していた。カトリーヌとクリストフは士官学校の同級生だったらしいので、世代的に王宮に来たことがあってもおかしくはないし、ディミトリークリストフ間も面識があり、そのひととなりをある程度知っていたのかもしれない。とにかくディミトリはクリストフが濡れ衣を着せられたことはわかっており、そのことをロナート卿にも伝えていたのだろう。当然ロナート卿の悲憤も理解できるし、彼の掲げた「正義」も理解できた。だからこそ、戦闘終了後に、「こうして彼らを斬って捨てずとも、なにか別の方法で理解し合えたのではないか」と言うのだろう。

 ただまあ当然、クリストフの処刑とその理由の隠蔽工作には、教会側から見ればきちんと合理的な理由があるわけで(セイロス教会にはフォドラ全土にまたがる治安維持機構としての側面があり、それが揺らぐことにはもちろん相応のデメリットがつきまとう)、そういう意味では教会側にもきちんと「正義」はある。そしてディミトリはそれをわかっているからこその、「すまない」だという側面もあるだろう。

 

……というようなことを長々と考えて、ようやくロナート卿の挙兵の理由がなんとなくわかったような気がしないでもないのだが、どうなの……かな……?このへん考察している人がいないのか、普通考察するまでもなく当然わかるのか、探し方が甘くて考察が見つからないのか、気になるところである。

ダスカーの悲劇って結局なんだったのさ その2

というわけで、前回の続きである。

2ー4、アランデル公とタレスと闇に蠢く者たち

 

 ダスカーの悲劇において、闇に蠢く者たち、ひいてはその首魁と思しきタレスが関わっていることは間違いない。そしてタレスが本編時にアランデル公であったことも間違いない。このタレスがらみの謎と、前回の積み残しを順に処理したいと思う。

 

 

 

2ー4ー1  アランデル公はいつからタレスになったのか+当時の帝国の状況

 これはディミトリのファインプレーによりほぼ確定できる。

 ディミトリはもともと、アランデル公をダスカーの悲劇の首謀者と睨んでいた。「王国を発った時期、不自然に途絶えた寄進。……何かと不審な点が多すぎた」のが理由である(蒼月EP19、同盟の危機)。

    この寄進というのは、かつて熱心なセイロス教徒だったアランデル公……もうややこしいので、闇うごに取って代わられる前のアランデル公を生前公と呼ぶことにする。この生前公がしていたセイロス教会への寄進のことで、EP6の挙動不審・青獅子の学級でディミトリが調べていた寄進帳から、1174年、つまりアランデル公がエガちゃんを連れて王国を発った年に途絶えていると確認できる。

 逆に言えば1173年までは寄進をしていたということであり、当然闇うごが教会に金を払う必要性は皆無なので、アランデル公は1173年までは人間だったということになる。つまり、エーデルガルトを王国に連れ去った時点のアランデル公は、少なくとも普通の人間ではあったのだ。

 一方、ダスカーの悲劇当時のアランデル公は1176年なのでもうタレスになっている。

 

 ここで少し、当時の帝国の状況と、アランデル公の立場を整理してみる。

 アランデル家は、帝国貴族名鑑によれば、「元は帝国の小貴族だったが、現当主であるフォルクハルトの妹が皇帝イオニアス9世の室となってから急伸し、アランデル大公の位を贈られる。エーギル家に協力し、七貴族の変を起こした主犯格の一人」である。

 いつごろ妹(=パトリシア)が嫁いだのかとか全然資料がないのだが、とりあえずエーデルガルトが生まれた1162年ごろは、まさにその妹を足掛かりに勢力を拡大していた時期と考えていいだろう。

 その後、政争により、たぶん1166年ごろ、パトリシアは帝都を追われる。ほぼ同時期の1167年、フリュム家の内乱が起きる。

 このフリュム家の内乱は、「中央集権化を打ち出した皇帝イオニアス9世に対し、同盟領に近いフリュム家が、帝国からの独立と、同盟への参加を画策。同盟のコーデリア家の協力を得て叛旗を翻したものの、帝国によって討伐された。」(外伝因果応報・クリア後会話)

というものである。つまり皇帝>貴族という結果に終わったわけで、このへんまでは皇帝の方が強かったのだ。

 そして、フリュム領の統治は実質的に隣人であるエーギル公が行うようになり、コーデリア領も帝国の介入を受けた。リシテアの支援会話でわかるが、ざっくりまとめると、このときコーデリア家に闇うごがやってきて、好き放題実験を始めたらしい。のちの七貴族の変のあと、エーデルガルトに血の実験を行ったのも「宰相(=エーギル公)一派の貴族たち」(エーデルガルト支援C+)であることを考えると、「帝国の介入」とは実質的にはエーギル公(もしくはその一派)の介入であり、彼らはその時点から闇うごとつながっていたのだろう。

 一方で、貴族たちはこの件を機に権力が皇帝に一極化することを恐れ、最終的に七貴族の変につながっていく。七貴族の変を起こしたのは六大貴族なのだが、きっかけとなったフリュム家をくわえて七貴族と呼んでいるらしい(外伝因果応報・クリア後会話)。

 ちなみに六大貴族はエーギル、ベルグリーズ、ヘヴリング、ヴァーリ、ベストラ、ゲルズである(第一部EP2散策時フェルディナント)。

 まあ、それはともかく、帝国貴族名鑑でアランデル公は七貴族の変の首謀者とされている。七貴族の変は1171年に起きたので、当時のアランデル公は生前公である。たぶん、政争で妹を追放された恨みなんかもあって、自らの意思で七貴族の変を起こしたのだろう。そしてたぶんその直後に、王国に亡命している。

 ……それって変じゃないだろうか?

 

2ー4ー2  なぜエガちゃんを連れて帝国に亡命したのか

 

 年表を信じるなら、1171年にはエーギル公が帝国の実権を握っているので、七貴族の変は71年中には終わったと考えられる。つまり、エーギル公とアランデル公は政争に勝ったのだ。にもかかわらず、アランデル公は王国に亡命している。おまけにエーデルガルトまで連れて行った。少なくとも、翌年には自らが煽動した政変が成功を見たのに。それはなぜか?

 エーデルガルトの戴冠式イベントで、イオニアス9世はアランデル公の連れ去りを止められなかったことを謝罪している。エーデルガルトひとすじのヒューベルトも、父と三日三晩の追撃戦を繰り広げてまでエーデルガルトをお助けしようとしている(エーデルガルトとの支援B)。なのでてっきり、最初にこの話を聞いたとき、闇うごのアランデル公がなにかに利用するためにエガちゃんを連れ去ったのだと思っていたが、それだと辻褄が合わない。

 皇帝に言うことを聞かせるための人質として?とも思ったが、皇帝にはほかに10人の子供がおり、彼らに対しては闇うごプレゼンツのとんでもねえ実験がすでに始められている可能性が高い。もはや人質もクソもないのである。

    一応、紋章持ちで次期皇帝の可能性が高いエガちゃんを懐柔するためとは考えられるが、亡命まで企てる理由にはいささか弱い。

 そうすると、生前公がエーデルガルトを連れ出したのは、政治的利用のためではない可能性が高い。

 ではなにかといえば、「おぞましい実験からエーデルガルトを救うため」……だったのではないだろうか。

     ほかの貴族にとってはただの道具でも、生前公にとって彼女は血のつながった姪であり、帝都を追われた妹の一粒種だ。それが地下に繋がれて体を切り刻まれることを、たとえ貴族だろうと、普通の人間は良しとしないだろう。

 王国にいたころのエーデルガルトは、ディミトリ曰く、不自由な生活を強いられて退屈しているように見えたらしい。彼女の存在は周囲に伏せられていたというので、外部との接触がほとんどできなかったのだろう。しかしそれは逆に言えば、退屈できるほど平和だったとも言える。アランデル公は七貴族の変の首謀者の立場を利用して、自分の肉親ひとりだけは助け出したのだ。

 ……まあ状況証拠だけで考察と言うのもはずかしいような感じなのだが、実はこれ、似たようなことをした人がもう一人いるのではないかと思うのだ。実の子に粛清されたベストラ候である。

 こっちはほぼほぼ勘なのだが、ヒューベルトとハンネマンの支援Bで、ハンネマンはベストラ候について、無欲で、反乱に加担するような人間には思えなかったと告げる。その上で、エーギル家についた理由をこう述べる。

「ただ……彼にも守りたいものがあったと我輩は思うのだ。逆臣の汚名をかぶろうとも、我が子に粛清されようとも、守りたいものが。」

 この「守りたいもの」、プレイ中にはぜんぜんほかの材料が出てこない(と思う)。しかし想像させる気がないのならこんなセリフは吐かせない……と思いたいので、乏しい材料からベストラ候が大事にしそうなものを想像すると、もうひとつしかないわけである。

 実の家族、わが子しか。

 七貴族の変に闇うごが関わっていることは確実だ。闇うごに対する知識がないただの人間が、闇うごの技術に対抗するのは大変困難なのは想像に難くない。ベストラ候はフレスベルグ家の敗北を悟り、その上で何を守るべきかを選択したのではないだろうか。

 

 ……話がそれたが、アランデル公の亡命理由を姪を守るためだと考えると、帝国に戻った理由は単純明快だ。生前公がタレスに取って代わられ、タレスにとってエーデルガルトは新しい実験材料に過ぎないので、さっさと帝国に戻って実験したいなーという次第である。

 このとき、帝国はエーギル公と結んだ闇うごが牛耳っている。

 

2ー4ー3   タレス≒闇に蠢く者たちは、なぜダスカーの悲劇を起こしたのか

 

    長くなったが、上記の条件を踏まえて、闇うごの目的を考えてみたい。闇うごがダスカーの悲劇に関わっているとわかるのは、前回も引用した第一部1月の盗み聞き会話だ。

 

炎帝「ダスカーで、アンヴァルで、惨たらしい行いを繰り返してきた貴様らに……果たして救いなど来るかな。」
タレス「すべてはおぬしが力を得るためにやったことではないか。」

 

 ディミトリは上記の会話を聞いて、炎帝がダスカーの悲劇の首謀者だと確信する。普通に聞けばそりゃそうなるわな。

 しかし、ダスカー当時エーデルガルトは13歳。しかも帝国に戻った二年前から血の実験をされている最中のはずなので、彼女にこの件を主導する力がないことは明らかと言っていいだろう。そうすると、ダスカーは闇うごが神をも燃やし尽くす最高傑作エーデルガルトを作り、セイロス教会をバチボコにする計画の一環として行ったのであり、そのことを指して「おぬしが力を得るために」と言ったのは間違いがない。

 では具体的に、ダスカーの悲劇の目的はなんだったのか?そしてパトリシアはどういう役割を果たしたのか?

 これは二つ考えられる。

①セイロス正教会に近しい王国の力を削ぐため

 これはまず間違いなくあるだろう。ダスカーの悲劇時点で闇うごは宰相一派と結んで帝国を掌握しており、戦争になれば帝国&闇うごVS王国&教会という構図は避けられない。将来エガちゃんが戦うときのために王国の戦力を削いであげたんじゃーん、逆に言えばおぬしが力を得たってことよ?というわけだ。

 この場合、パトリシアの協力をとりつけたのは、ダスカー随伴時のルートを漏らさせるとか、襲撃しやすくなるようになにか(火をつける、隊列を乱すなど)させるため……ということになる。

 しかしこれだけが目的だとすると、微妙な点がふたつある。

 ひとつは、パトリシアの役割はコルネリアでもできるんじゃないのか?ということ。確かにダスカーに同行することはできないだろうが、王国で重用されていたコルネリアなら旅程くらいは教えてもらえるだろう。むしろ王と二人きりで会うことさえ禁じられていたパトリシアの方が、手持ちの情報については少ない可能性すらある。というか、ぶっちゃけてしまえばこの程度の役割、なくてもないなりにどうにかなりそうである。前回書いたが、パトリシアに王国を捨てる決心をさせるために、コルネリアはけっこうな手間暇をかけている。そのコストにリターンが見合ってなくない?と思うのだ。

 もうひとつは、エーデルガルトの言いまわしだ。

 彼女は「ダスカーで、アンヴァルで」と口にする。この言い回しには変な点が二つある。

 ひとつはそもそも、ダスカーが出てくること。

 闇うごが惨たらしい真似をした例は枚挙に暇がないはずだが、なぜわざわざダスカーをチョイスしたのか?このダスカーが悲劇を指すのかそのあとの征伐を指すのかは謎だが、エーデルガルトが直接体験したアンヴァルと並べて出てくるのには突然感がある。直近にはやはり自分が(炎帝あるいはエーデルガルトとして)直接目にしたルミール村の件があるので、そっちを出すのが自然ではないだろうか。あるいは、帝国領であるフリュム領での惨状でもいい。……まあここでダスカーの関与を匂わせないとディミトリが敵をロックオンしてくれないので、その都合かなという気もするんだけども。

 もう一つは順序である。年表と照らし合わせるとわかるが、エーデルガルトが帝国に戻ったのが1174年、ダスカーは1176年。どうしてダスカーが先に出てくるのか?

 まあ脚本がそこまで考えてなかったから、とか別に必ずしも時系列順に喋らなくてもいいし、とかあるのだが、せっかくなのでこの言い回しに理由があるとしたら……と二つほど理由を考えてみた。

 

・エーデルガルトもダスカーの悲劇に立ち会っていた

 1176当時のエーデルガルトはおそらく闇うご実験中である。ある程度の成功を得て、そのパワーの試し撃ちのためにダスカーが使われた、という線。これならば、エーデルガルトが直接体験した出来事だし、インパクトはアンヴァル以上だろうから、アンヴァルよりも先に出てくるのも頷ける。

 ……が、さすがに無理があると思う。まず王国領までエーデルガルトを持っていくのが大変だろうよとかもろもろの問題を置いても、第一部2月課題出撃後(決別の刻・青獅子の学級)で、ディミトリがダスカーの惨劇を起こした理由を尋ねると、エーデルガルトは「知ったことではない」と答え、紅花EP17「いざ王都へ」でも「彼が復讐に囚われたのは、伯父たちの策謀の結果……。すべてを私のせいだと考え、彼は王としての道を見失ってしまった。」という。さすがに直接関与していてこの返答は畜生すぎるので、本当に知らないのではなかろうか。

 

・直接関与はしていないが、エーデルガルトを炎帝にするために必要だった/行われた

 単純に帝国以外の戦力を削ぐ目的だけでなく、ダスカーによって何かを得て、それが炎帝の作製に使われた、というのはどうだろう。エーデルガルトはなんらかの時点で闇うごからダスカーが彼らの仕業によることを知らされたはずだが、「ダスカーの件のおかげでお前の実験が進展したよ~」みたいなことを言われれば、印象に残っていてもおかしくない。        おまけにその場合、ダスカーの犠牲によってアンヴァルの実験が完成を見たので、エーデルガルトの時系列の認識としてはダスカー→アンヴァルでも間違っていない。

 じゃあ何を得たのか?

 というわけで、話がとてもとても長くなったが、闇うごの目的として考えられるもの、その2。

②エーデルガルトの実験のためにパトリシアが必要だったため

 パトリシアはエーデルガルトの実母、近い血を持った人間である。エーデルガルトの血の実験が成功したのは、パトリシアでも実験を行ったから。実験を行うためには、生身の元気なパトリシアが必要だった。だから、パトリシアの協力を求めた。タレスの言葉は、文字通り、エーデルガルトが二つの紋章の「力」を得るために、ダスカーでもアンヴァルでも惨劇を起こしてやったのだ、という意味だと考えれば、こちらも筋が通る。

 ……まあ、これだとパトリシアは実験の犠牲になっているので、それにエガちゃんが言及しないという不自然さが残るのだが……。闇うごはダスカーの惨劇が実験の進展に必要だったことは伝えたものの、パトリシアを材料にしたことは言わなかった、ということでなんとかダメだろうか。ダメか。

 

 というわけでまとめると、「ダスカーの悲劇は闇うごが実験材料としてパトリシアを手に入れつつ王国の勢力を削ぐため、コルネリアを使ってパトリシアの協力を取り付け、王国内の不満分子をそそのかして協力させて行った」……んじゃないのかなーと思うのだが、これ以上の確証はない。

 特にこの考察はパトリシア善説に基づいて書いたので、パトリシア悪説だと全然違う見方になる(例えばパトリシアからダスカーに王のみならず王子も連れて行ってくれるように頼んでもらって一網打尽を狙ったとかなら、コルネリアだけでは足りずパトリシアの協力をとりつける意味もあるだろうし……でもディミトリ不憫すぎんか??)のだが、とにかく材料がない。早く設定資料集か台詞集か続編を出してほしい。ひたすらハンネマン先生がシャンバラを発掘するだけの続編でもいいので……。

 

おまけ1:エーデルガルトとディミトリの認識について

 エーデルガルトはダスカーの悲劇について、「闇に蠢くものたちの策謀によって起こされ、自分は無関係だが、ディミトリは全部エガちゃんのせいだと思っている」……と認識している(上記紅花EP17)。これは紅花での認識だが、全ルート全段階を通じてこうだろう。ただ、闇うごの犠牲者として母を挙げることも、他に母の思い出を語る部分もまったくないので、パトリシアについてはあまり知らないか思い入れが薄いようだ。決別の刻・青獅子の学級でディミトリに「(ダスカーで)実母まで手にかけたのか」と聞かれて動揺したようにはあまり見えないので、実母がダスカーで死んだことは知っていそう。パトリシアが王国に嫁ぎ、ダスカーで巻き込まれて死んだ……くらいの認識ではないかと思われる。物心つく前に姿を消した母であれば、わりと自然な反応なのかもしれない。

 

 じゃあ一方ディミトリはというと、蒼月ルートでは割と核心に近づいている。

 アランデル公のところで引用したように、ディミトリは当初アランデル公を首謀者として疑っていた。現在のアランデル公はタレスであり、闇うごの首魁なので、これはある意味一発で正解を引いている。

 次に「すべてはお主が力を得るために~」を聞いて炎帝がすべての首謀者だと思い込む。まあ実は全部炎帝が糸を引いていた、とまで思っていたかは定かでないのだが……。たぶん闇ゴリラ期間くらいまでの(あるいは青以外の)ディミトリにとって、エーデルガルトが直接ダスカーに手を下したかどうかはもはやどうでもよかっただろう。帝国と闇うごは手を組んでおり、帝国のトップはエガちゃんなので、彼からすれば倒すべき敵の親玉はどのみちエーデルガルトである。

 そしてEP19「同盟の危機」で「アランデル公がコルネリアと結託して……なら5年前の、クロニエたちの言葉は……?」と考え込んでいるので、たぶんここで炎帝が首謀者ではないことに気付き始めている(盗み聞きイベントのメンバーはタレス炎帝クロニエなので、ここでいう「クロニエたちの言葉」はタレスのお前のためやぞ発言でいいだろう。)。その後クレイマン子爵の部下の懺悔を聞いたので、おおよその全貌は把握できたのではないか。ディミトリが最後にちゃんと整理して自分の推理を語ってくれればもうちょっと把握しやすかったと思うのはプレイヤーがぽんこつだからだろうか。

 シルヴァンあたりはノーヒントでダスカー人の仕業じゃないと見抜いていた(ドゥドゥー支援C)ので、誰かとの支援でそのへんを探ってほしかった気もする。ディミトリかドゥドゥーと支援A+くらいまであればもうちょっと情報が集まりそうだったのだが、まあ同学級女子のアネットとすら支援Aがない男にそれを期待するのは酷というものか。

 

おまけ2:なぜヒューベルトは蒼月ルートでは手紙を書いてくれないのか

    蒼月はレア様救出のあたりですでに時をよすがしてしまうので実は手紙があったケースも考えられなくはないが、とにかく、おそらく、蒼月ルートのヒューベルトはシャンバラの場所を把握していない。そしてたぶん紅花ルートでもクリア時点では把握していない。

 

    ヒューベルトがシャンバラの場所を突き止めて手紙をくれるのは銀雪と翠風なのだが、ここでヒューベルトは「メリセウス要塞を落とした際、彼らが発する魔道を感知し、本拠を割り出した」と書いている。この魔道とは光の杭のことだ。        銀雪と翠風ではメリセウス要塞に光の杭が落ち、それを知っていた死神騎士が逃げたことで主人公らはからくも全滅を免れる。

    ところが蒼月ではそもそも光の杭が落ちていない※ので、ヒューベルトも突き止めようがない。ついでに帝国側が把握しているネームド闇うごはクロニエ・ソロン・タレス・コルネリア・ミュソンあたりだと思うのだが、全部死んでいる。

    そうすると手紙があったとして、「闇うごっていうのがいて地上めっちゃ恨んでるんでいつか災いもたらすから気を付けてね。知ってるのはだいたい死んじゃったしあとどのくらい残ってるのかわかんねーし本拠地わかんねーけど」くらいしか書くことが……ないので……やっぱりないんじゃないですかね手紙。まあディミトリとハピをペアエンドにしてあげると結構闇うごを深堀りできたっぽいので、なにがしか手掛かりは残っていたのかもしれない。

    ただヒューベルトがいないことに加え、たぶん闇うごは光の杭を少なくともしばらくは撃てないので、被害は少ないだろうがシャンバラを突き止めるのはだいぶ難しそうである。

 

    一方紅花は、アリアンロッドに光の杭が落ちるのだが、シャンバラには行けない。納期とか話の都合というのもあるとは思うが、紅花の光の杭には他2ルートと大きく違う点がある。エーデルガルト陣営が事前に光の杭が落ちることを察知していないのだ。

    翠風と銀雪で逃げ出す死神騎士は炎帝の部下なので、ヒューベルトも当然光の杭について(なんらかの兵器を用いる、レベルではあろうが)聞かされていた可能性が高い。

    一方紅花EP16「アガルタの術」でヒューベルトはアリアンロッドに落ちた杭について「おそらくは何かの魔法」と言っているので、知らされていなかったのはもちろん、魔道だということも詰め切れていない。つまり、他2ルートと紅花では光の杭に対するヒューベルトの知識量にだいぶ差がありそうなのだ。逆探知はとてもできなかったのではないだろうか。将来的に探知できる可能性はあるが、それは光の杭を落とされるということで……タレスもミュソンも健在だし、けっこう茨の道である。がんばれエガちゃん。

 

※蒼月ルートでの光の杭は、撃たなかったのではなく撃てなかったと思われる。

 タレスはシャンバラという本拠地に光の杭を落とし、もろとも自爆特攻を試みる権限がある以上、少なくともシャンバラを拠点とする闇うごの最高権力者か、それに近い存在だ。しかし蒼月ルートでは、クロードの策略でディミトリがフェルディア高速占領からのデアドラ大返しをキメたため、タレスはコルネリアが撃破されたことを知るよりも前にデアドラでディミトリと鉢合わせ、街角で手槍ワンパンされてしまう。闇うごからすれば相当にやばい事態で、メリセウスには本来ならなんとしてでも杭を落としたかったはずだ。それなのに落とせなかったのは、タレスがいないと発射命令が出せないからではないだろうか。体制を立て直し、次の指導者を立てればあるいは撃てるようになるのかもしれないが、宮城での様子からするとだいぶ追い詰められていそうなので、復旧には時間がかかるだろう。いや、復旧しないのが一番いいんだけどね。

ダスカーの悲劇って結局なんだったのさ その1

 この自粛中にFE風花雪月をクリアした。

 

 とてもいいゲームだった。システムとシナリオとグラフィックのどれもが高水準でまとまっており、今までFEをまったくやったことのない自分のような人間であっても、無理なく最後まで楽しめたので、まだやっていない人はぜひやってほしい。そんな人がこんな辺境の記事がひとつしかないブログを見に来るとは正直思えないのだが、もしなんかの気まぐれで見ていると困るので言っておくと、以降全ルートのネタバレを激しく含みます。今からやるならおすすめは青→赤→黄の順で周回です。

 

 で、非常に楽しめはしたのだが、シナリオ上どうしても何か所か疑問の残るところがあった。風花雪月はおそらく意図的に、いわゆる「探偵の謎解きパート」が欠けている部分があるので、ある程度は仕方ないと思うし、だいたいは賢い先達の考察を読むことで自分なりに納得できた。

 ただ、唯一ダスカーの悲劇については、あまり情報を抜き出してまとめたり考察したりしているサイトを見つけられなかった。もしかすると見落としているだけなのかもしれないが、このたびようやく全ルートと全支援会話を一応コンプリートしたので、以下自分用の備忘録としてまとめてみた次第である。一応考察もしてみたが、筆者は初見青ルートでアランデル公が闇うごだということすらイマイチわかっていなかったポンコツなので、むしろ妄想くらいの気持ちで読んでほしい。

 万一このブログを読む奇特な人がいて、ここにも情報があるけど抜けてるとか、この考察がいいぞ!みたいなのがあったらコメント欄で教えて頂けると助かります。

 なお、確認できる限りの情報はゲームで確認したが、直近のセーブのない散策時会話等は下記サイトの台詞集で確認している。本当にありがとうございます。神。

FrontPage - ファイアーエムブレム 風花雪月 攻略Wiki - 天馬騎士団 かわき茶亭

 イベント鑑賞から確認できない差分とかあるので真剣に台本全集をだしてほしい。できれば電子で。

 

 

  

1、本編でわかる情報について

1-1、年表

 まずは本編開始時点でわかるダスカーの悲劇前後の年表(生徒名簿の所見で読めるものと、大修道院の書庫でわかるもの)をざっと抜き出してまとめてみる。なお、文章は作中そのままではない部分もあるが、取りこぼしはないはず……である。あと、ハピは直接ダスカーに絡んではいないのだが、彼女の支援会話の内容はのちのち必要なので動向を含めてみた。

1162  エーデルガルト、ディミトリ誕生

1164  妹の病死を機に、ハンネマンが帝国貴族の爵位を返上する

     リシテア誕生

1165   ハンネマンが帝国を出奔し、ガルグ=マクの士官学校の教師に。

1167  コーデリア家がフリュム家の内乱に巻き込まれ帝国の介入を受ける。

1168  ハピが隠れ里から出たところを何者かにさらわれ、魔道の実験台となる。

1171  七貴族の変。皇帝が権力を奪われ、フェルディナントの父親が権力を握る。

     エーデルガルトが伯父アランデル公に連れられ、王国へと亡命する。

1174  エーデルガルトがアランデル公と共に帝国に戻る。

1176  ダスカーの悲劇。国王ランベール、フェリクスの兄グレンほか多数死亡。

     国王一行のうち、ディミトリだけが生き残る。

     ハピが解放され、ファーガスの教会で暮らす。

     アッシュの義兄クリストフがセイロス騎士団によって処断。

     ダスカー征伐。ドゥドゥ―がディミトリの従者になる。

1180   (4月)本編開始

 

となっている。

1-2 開始後にわかる情報

 基本的にダスカーの悲劇は青ルートでしかあんまり語られないので、青ルートに沿って情報を整理してみる。

 第一部6月、カトリーヌ(ロナート卿討伐の課題出撃前会話)曰く、ダスカーの悲劇とは「ファーガス国王がダスカー人に殺された事件。殺害理由は国王が大規模な政治改革を行おうとしており、政敵が多かったため(要約)」。これがおそらく、第一部時点の作中での一般的な理解だと思われる。

 もっともこの前半部分は大嘘であり、ディミトリ曰く「父上が殺されたあの日、ダスカーで俺が見た襲撃者は、ダスカー人などではなかった」(ディミトリ・ドゥドゥー支援B)。

 

 第一部1月「討つべき敵」で、タレス(アランデル公)に対して炎帝が「ダスカーで、アンヴァルで、惨たらしい行いを繰り返してきた貴様ら……」と言う(後述するが、タレスも肯定する返事をする)ので、ここでタレスを含めた闇うごは絡んでいることが確定する。

その後しばらくディミトリが荒れクサンドルになってしまって話が進まないのだが、

 蒼月EP17、課題出撃前にロドリグ(フェリクスの親父殿)が「……パトリシア様の馬車には争ったような形跡すらなかった。(中略)瀕死の重傷で済んだ殿下を除いて、他の者は全員その場で惨殺されていたというのに、陛下の後妻であるパトリシア様のご遺体だけが、見つからなかった……」とほのめかし、

 蒼月EP18、フェルディアでコルネリアが死亡時に「……10年前(中略)パトリシア様は……すべてを犠牲にしてでも実の娘に一目会いたいと……そう、仰った。ですから……私は……王の首と引き換えに、その願いを、叶えたまで……」とさらにほのめかし、

 蒼月EP21、イベント名「死の真相」でようやく大筋が明かされる。ここはぶっちゃけ台詞と情報が多いのでエクストラからイベントを見返した方が早いくらいなのだが、ざっくり重要台詞をまとめると、

レイマン子爵麾下の捕虜「あの惨劇の渦中にあっても、パトリシア様だけはご無事だったはずです。あの方が乗られていた馬車には近づくなと、あらかじめ指示されておりましたから」

「我が主は、急進的なランベール王のやり方にかねてより危機感を抱いていました。
そんな折、何者かからダスカーの件に加担するよう持ち掛けられ……」

ギルベルト「この数節、帝国に寝返った諸侯を探り、パトリシア様について調べておりました。コルネリアの言葉は正しかった。……やはり二人は、結託していたのです。」

「無論、あの二人がすべてを仕組んだなどと申し上げるつもりはございません。
恐らく裏には、王政に反感を持つ貴族や、王国の混乱を狙う何者か……

帝国……そしてソロンやクロニエのような者たちの思惑があったのでしょう。」

というわけで、クレイマン子爵をはじめとした国内の不穏分子とか帝国とか闇うごとかとパトリシアとコルネリアが手を組んだのだな、ということはわかる。

 

2、まとめと考察

 で、結局、ダスカーの悲劇は誰が何のためにやったのか?

 絡んでいるっぽいのはクレイマン子爵、コルネリア、パトリシア、アランデル公・タレス(闇うご)あたりなので、順に見ていく。

2-1、クレイマン子爵

 こいつの関与は確定しているのだが、ギルベルトが上述のとおり「寝返った諸侯を探り」と言っているので、たぶんクレイマン以外の反王家の貴族も何人か絡んでいたと思われる。目的は急進的なやり方を推し進めるランベール王を殺すこと。そういう意味では、カトリーヌの「国王は政敵が多かったから殺された」というのはあながち間違いでもないのだろう。

 ちなみにクレイマン子爵はその後ダスカー征伐で名を上げ、ダスカーを領地としたようである。なんたるマッチポンプ。ドゥドゥ―でこいつをボコボコにする外伝があればよかったのに。

 ただ、「何者かに加担するよう持ち掛けられた」というのもおそらく真実だろうから、少なくともクレイマン子爵は犯人ではあるが首謀者とはいえない。素直に考えると、闇うごに唆され、お膳立てもしてもらったのだろう。

 

2-2、コルネリア

 まずコルネリアは闇うごだ。個人スキルが「アガルタの術」なので疑う余地がない。ただし「コルネリア」が生まれついての(?)闇うごだったわけではないと思われる。

 蒼月EP19の散策時のディミトリの台詞によると、「20年以上前、父(ランベール)に招聘されて帝国からやってきた。フェルディアを疫病から救い、聖女と讃えられていたが、ある日を境に人が変わった。それでも、父は彼女を重用し続けた。病を治した功績があり、継母も彼女を信頼していたから(要約)」。帝国で知り合いだったハンネマンも同散策時「立派な学者だった」というので、モニカよろしく闇うごに取って代わられたのだろう。

 ではいつ取って代わられたかだが、上記の会話の中で、

 ハンネマン「ちょうど我輩が貴族をやめ、帝国を去った頃……彼女もまた帝国を出て、王国へ行ったと記憶している。」

ということなので、だいたい1165年ごろに王国に渡っている。(疫病が流行ったのは1180年11月のシルヴァン曰く「20年近く前」なのでもう少し前かもしれないが、この疫病で王妃(ディミトリ母)が死んでいるので、早くても1163くらいだろう。)

 1168年にハピをさらったのは「おばさん」=コルネリアなので(ディミトリ・ハピ支援Aほか)、そのときには闇うごになっている。疫病を解決するまでに時間もかかっただろうから(コルネリアは都市の整備によって疫病を解決している。蒼月EP18モブ騎士)、だいたい1166~1167くらいに取って代わられたとみていいだろう。ディミトリが4~5歳のころということになるので、上記散策時のディミトリの「物心ついた時にはあの調子」という台詞ともつじつまがあう。

 ただし、コルネリアは闇うごなのだが、パトリシアは闇うごではないので、動機は二つ考えられる。

①親しかったパトリシアの願いを叶えるため

 長くなるので詳しくはパトリシアの項で書くが、パトリシアとコルネリアが「親しかった」ことは間違いない。パトリシアがどの程度の「お願い」をしたのか――つまり、夫と義理の息子を惨殺して帝国に帰りたいとはっきり願ったのか、ただ帰りたいと言ったら想定以上の惨劇になったのかは別として、本人の死に際の台詞を額面通り受け取れば、そういう動機も考えられなくはない。

②闇うごとしての目的のため

 闇うごとしてダスカーの悲劇を起こす必要があったため、パトリシアを利用した、もしくは利害が一致した。パトリシアのためにやったのだ、というような言い回しをしたのは、最後っ屁でディミトリにMPダメージを与えようとしたから。

 どちらなのかは作中の描写からは確定できないが、個人的には②ではないかと思っている。理由はふたつある。

 ひとつめは、闇うごの地上人に対する態度だ。

 闇うごは銀雪・翠風ルートのヒューベルトの手紙にあるように、地上の人間すべてを憎んでいる。その理由が作中だとぼんやりしか語られないのでいまいちわかりにくいのだが、作中の印象からは、単に憎んでいるというより、文字通り「獣」と称して蔑み、見下して、言い換えれば同じ人間だと思っていないように見受けられる。

 青ルート第一部1月の盗み聞きイベントなど最たるもので、敵地の道端で集まってだべっているというのは、普通すごいバカかライターが何も考えず話の都合のためにやらかした以外にはおよそ考えられないクソムーブである。それをキメたうえに、盗み聞きがバレても平然としてこっちを襲いもしないし、トマシュなんか必要もないのにソロンに目の前で変身した上にお名前まで教えて下さる。バカかクソライターでなければ理由はひとつ、闇うご側がどんなにガバっても問題ないほど、闇うごにとっての(一般の)地上の人間は技術と知性に劣った存在なのだ。いわば数だけはいっぱいいて鬱陶しい虫である。

 パトリシアがどれほど優秀だったとしても、だからといってコルネリアが虫に親愛とか友愛とか、そういう感情を抱くというのは考えづらい。いやもちろん、広い世の中には虫の方が人間より好きとかいう人もいるとは思うが……。

 ふたつめの理由はもっと単純で、パトリシアの願いは多分叶っていないからである。

 パトリシアの願いは、帝国に戻って娘に会うことだ。しかし、エーデルガルトが母の話をすることはほとんどない。唯一口にするのは黒鷲EP9の女神の塔である。

 詳しくは後述するが、エーデルガルトは両親のあいだには愛があったと思う、と述べたうえで、

 「私が生まれる前の話なのが残念。私が物心ついた頃には、母はすでに帝都を追放されていたから……。」

 という。

 もしパトリシアが帝国に戻ってエーデルガルトに会っていれば、どこかで言及するのではないか。もちろんエーデルガルトは多分パトリシアの姿を覚えてはいないと思うので、名乗らないで会ったとか遠目に見たなども一応考えられるのだが、そもそもパトリシアがコルネリア(≒闇うご)に対して影響力を持っていれば、エーデルガルトが宮城の地下で鎖につながれ、身体を刻まれるようなこと(主人公との支援C)は止めさせただろう。一目でも会えば、エーデルガルトがひどい目にあった(あっている)ことはわかるはずだからだ。そのへんを加味すると、たぶんパトリシアは闇うごに利用されたものの、本懐は遂げられなかったのだ、と考えた方が自然ではなかろうか。

 じゃあ②だとして、闇うごの目的って?……というのはちょっと後述する。

 

2-3、パトリシア

 最大の謎。彼女はいったいなにがしたくて、ダスカーの悲劇でどんな役割を果たし、どうなったのか?

 パトリシアの情報をまとめてみる。

 皇帝イオニアス9世の元妻(EP9女神の塔のエーデルガルトによれば正妃ではなく、後宮の中の一人)であり、エーデルガルトの母にしてアランデル公の妹であり、ランベールの後妻=ディミトリの継母。政争で帝都を追われ、王国に渡ってランベールと結婚した。(以上複数個所で出てくるが、まとめて聞けるのは蒼月EP19「それぞれの覚悟」ディミトリ)帝国時代の名はアンゼルマ(ディミトリ・ハピ支援B)。ぶっちゃけパトリシアについての情報はほとんどディミトリ・ハピの支援会話にしかなく、漏らさないようにすると支援会話を全部書くことになりそうなので、以下では抜粋して書いている。

 まず、エーデルガルトが女神の塔で母は「物心つくころには追放されていた」というので、物心つくころ=せいぜい5歳ごろまでとすると、パトリシアが国を追われたのは1163~1167くらいまでと考えられる。

 さらに、ハピによると、「おばさん(=コルネリア)があの人を王国に連れてきた、って言ってた」(ディミトリ支援B)ということなので、これを信じるならコルネリアが王国にわたってそれなりの地位を得たであろう1166以降ぐらいではないだろうか。というわけで、年表を見ればわかるとおり、この政争は七貴族の変ではなく、書庫の書物にも載っていない小規模なものだと思われる。彼女は後宮にいて皇帝の寵愛を賜っていたようなので、ありがちだがそのへんの争いだろうか。少なくともアランデル公はこの政変によって完全に地位を失ったりはしていないので、正妃の不興を買った妾が家を追い出された的なことだったのかもしれない。

 

 王国に渡ったパトリシアは、ランベールに見初められて再婚したが、「外部との関係を完全にと言っていいほど絶っていた。(中略)後妻として迎えたことを把握していたのも、ごく限られた者だけ」(支援B)な上に、ランベールとも「二人で会うことさえ許されていなかった」。そんな二人のあいだを常に仲介していたのはコルネリアである。(支援A)オイそんな結婚があるかよと思うが、ここを考えると長くなるので置いておく。

 その王国滞在中、パトリシアはコルネリアを信頼し、またコルネリアもパトリシアを実験施設に連れて行ってハピに会わせるなど厚遇?していたようだ。友達に自分の実験の犠牲者を見せるとか、相当にキている。パトリシアはハピの代わりにハピの境遇に怒ってくれた。また、ディミトリの面倒をよく見ていたようで、ハピによればディミトリの言動はパトリシアによく似ているらしい。ディミトリもハピの指摘を「嬉しい」と言っており、「俺を育ててくれた人」と呼ぶほど慕っている。(支援B)

 そして、コルネリアによれば、彼女が「すべてを犠牲にしてでも実の娘に一目会いたい」と願ったことが、ダスカーの悲劇の引き金となった。

 ただし、その前段階で、「エーデルガルトが帝国に亡命していたのに、王が隠していたせいで亡命中に会えなかった」とパトリシアが怒っていたことを支援Aでハピが思い出している。実際にはアランデル公は皇女を連れ出したことを伏せていたため、王もエーデルガルトが王国に滞在していたことを知らなかったので、べつに隠していたわけではなかった。ディミトリはこれについて、コルネリアがダスカーの悲劇を起こすため、パトリシアを騙して(ついでに、パトリシアの存在をアランデル公に隠し、亡命中に母娘を会わせないようにした上で)故意に行き違いを起こさせたのだろうと推測している。

 だいたい作中でわかるのはこんなところなので、以下少し考えてみる。

 まずパトリシアは闇うごではない。当たり前だが、闇うごなら行き違いを生じさせるなんていうしちめんどうくさい真似は必要ない。

 ちなみに、彼女を王国に受け入れたときのコルネリアは時期的にたぶん闇うごの可能性が高い(が確定できない)が、ハピがパトリシアとコルネリアのことを「古い友達」と聞いたと述べている(支援B)し、普通に考えて帝都を追われ、帝国時代の友人だったコルネリアを頼って王国に行ったと思われるので、友人関係になったときのコルネリアは闇うごではない。

 じゃあどんな人だったのかと言うと……これが率直に言ってわからない。

 ハピがパトリシアと面識を持ったのは、閉じ込められてコルネリアの実験台にされているとき、友達であるパトリシアをコルネリアが連れてきたからだ。そこでパトリシアは、実験台にされたハピに対して、「自分の境遇に憤ってもいいはずだ」というようなことを言ったらしい。そこだけ聞くといい人のような気もするが、年端もいかない子供を閉じ込めてそんな境遇にしているのはテメーの友達である。おぬしおぬし。まあコルネリアがどうしてそんな真似をしたのかがそもそも全然わからないのでいまいち状況も見えてこないのだが……。

 ありそうな線としては、ハピに実験を施しているのは王の命令だ、とコルネリアがパトリシアに嘘を吐いた……とかだろうか。それならば、わざわざコルネリアが実験施設にパトリシアを伴った説明もつく(パトリシア→ランベールの心情を悪化させるため)し、ハピを見てなお、パトリシアがコルネリアに信頼を置いていた理由もいちおう理解できる。

 一方ギルベルトは最初、客観的に考えれば元敵国人の上死体もねえとドチャクソ怪しいパトリシアを疑ったロドリグに対して「あのお方への侮辱は、いくらあなたとて、許されることではない」と言うので(蒼月EP17、着陣)、パトリシアのことはかなり好意的に見ていたはず。ディミトリも、メルセデスとの支援B+で継母の思い出を語るのをはじめ、似ていて嬉しいというほど慕っている。おそらくディミトリの面倒は本当によく見ていたし、ハピに同情し、義憤を覚えるようなひとがらであったのは事実なのだろう(ディミトリはともかく、ハピに対して慈悲深い人物の演技をする必然性がない)。

 その一方で、コルネリアがわざとランベールとパトリシアをすれ違わせ、ランベールを憎むよう仕向けていたところを見ると、最終的に王への憎しみを募らせ、「すべてを犠牲にしてでも実の娘に一目会いたい」と告げたこともまた事実なのではないだろうか。

 とにもかくにも、ついにパトリシアは決断を下し、ダスカーの悲劇は起こった。

 犠牲にする「すべて」に、どの程度までが含まれることを彼女が見込んでいたのかは定かでないが、ハピへの態度を見ていると、王家の人間はともかく、年若いグレンのような騎士たちがひとり残らず惨殺されることまでを良しとしたとは考えにくい…というのは、パトリシアに夢を見すぎだろうか。

 まあこのへん、全然情報がないので完全に憶測というかもはや妄想なのだが、一応このあとの考察をするうえでは、パトリシアは引き金を引いたが、あそこまでの惨劇になったのは想定外だった……ということにしておく。

 

 しかしながら、それでもまだ謎が残る。これほどの手間暇をかけ、闇うごはなぜそこまでしてパトリシアの協力を得たかったのか?そもそも、闇うごはどうしてダスカーの悲劇を起こしたかったのか?

 

 ……というのをアランデル公にからめて書こうと思ったが記事がどう考えても長すぎなので分けます。やる気があれば次回、アランデル公とタレスと闇うごの目的から。